日本語教育

ハーフの子どもたちの日本語継承語教育 過酷度診断

投稿日:2016年4月13日 更新日:

一概にハーフの子どものための日本語継承語教育といっても

それぞれの家庭での状況が全く違うので、一筋縄にはいきませんし、

同じ方法が全ての家庭に当てはまるということもありません。

 

 

一般的にも言われていることですが、

言葉を上手く運用することが出来るには、その言葉にどれだけ長く接したか、時間を割いたかが大きなポイントになります。

もちろん、あるていどの学習の質が求められることは言うまでもありませんし、

そして、聞く、話す、読む、書くという4つの側面を過不足なく行っていくことも重要でが・・・。

 

詰まる所、

海外における日本語継承語教育の最大の難関は、

子どもたちが日本語に接する時間がそこまで取れないということなのです。

 

そして、それは至極当たり前のことなのです。

子どもたちの時間もみんな同じ1日24時間しかないのです。

 

だから、読み書きが同じ年齢の日本の子どもたちより遅れていたり、

語彙が少なかったり、文法を間違えたりするのも当然のことなのです。

 

しかしながら、親が日本人だから子どもも日本語を話したり、読んだり、書いたりするのは当たり前と

冷静さを失って躍起になっているのが私達ではないでしょうか。

 

日本語を読んだり書いたりできれば、確かにお得です。

でも、もし日本語が出来なくても、子どもたちは生きていけますし、仕事も出来ます。

 

まあ、こんな風に書くと

「子どもたちに日本語を教えているのに、子どもたちが日本語を学習することに否定的ですね。」

と言われそうですが、そうではありません。

 

子どもたちには、日本語で本を読めるようになって、視野を広げて欲しいと思っています。

 

ただ、

それぞれの家庭での状況をしっかりと分析し

また、

子どもたちの教育の優先順位を守らなければ

 

「あー、漢字が読めない、書けない。」

「全然、話せないし、どこまで理解してるか怪しいわ。」

「母親が日本人なのに、恥ずかしい。」

 

と、常に心を乱してしまうことになります。

 

 

私は医療・福祉に携わっていたのですが、

学校の先生からいつも言われていたことは、

「患者さんのゴールは、病前に戻ることではない。

一度言葉を無くしてしまったら、元通りになるのは難しい。

患者さんのゴールは、その時に出来る最善の状態に持って行くことだ。」

ということです。

 

そうなんです、

患者さんが心理的にも、身体的にも、機能的にも、その時の最善の状態になれること。

それをどのように実現していくかが医療・福祉スタッフの仕事と言えるわけです。

 

日本語継承語教育でも同じことが言えると思います。

 

それぞれの子どもたちはそれぞれの状況で、それぞれに頑張っています。

その状況をよく分析したうえで、今目の前の子どもにとって最良の方法とは

なんだろうと考えること、そこが大切なことだと思います。

 

ですから、一度失語症になってしまった患者さんを元通りに戻すことをゴールにしては、

患者さん本人も、医療者も擦り切れてしまいます。

 

同じく、24時間しか時間のない子どもたちに、日本語が出来るという結果を求めすぎては

子どもも親も疲れ果ててしまいます。

 

でも、なんだかんだ言っても、

やっぱり日本語が出来るようになって欲しいって思いますよね。

 

大丈夫です。

 

語学は大人になってからでも、学習することが可能だからです。

 

正しい方法で、一定期間集中して勉強すれば、海外生活をしなくても

英語でネイティブと対等に話せるようになるし、同時通訳者にもなれる。

という、同時通訳者の方を知っていますが、まさにそんな感じです。

 

しかも、少なくてもお母さんの日本語を聞いて育っていて、日本語の語感

がありますので、一旦本腰を入れれば、まったくの外国人よりもかなり速いスピードで習得できることが

予想されます。

 

 

以下に、ハーフの子どもたちの日本語継承語教育 過酷度診断ということで、より日本語教育が過酷になり得るだろうポイントを

あげておきました。これを参考に、お子さんの現状をチェックし、今何をどれだけ行うことが

最善なのかということを再考していただければと思います。

 

  • 両親の母国語のうちどちらの言語の話される国にも住んでいない
  • 学校では両親の母国語以外の言語で勉強している
  • 親(日本語話者)がフルタイム勤務である
  • 両親間で話される言葉が全く別の外国語である
  • 日本語で話す親しいお友達または兄弟がいない
  • 親(日本語話者)が日本語と現地語(またはその他の言語)を混ぜて話している 一人一言語が徹底出来ていない
  • 子どもが言葉の習得に不得手なタイプである(キャパシティーや性格なども含め)
  • 子どもが読み書きを勉強している言語の数 1言語、2言語、3言語、4言語、5言語 ※言語数が多くなる程大変です。

 

裏を返せば、この質問全てに当てはまらず、子どもが読み書きをしている言語が2~3か国語である場合だと

比較的日本語に力を入れることが出来ると思います。(※小学校でも外国語の読み書きが導入されている場合があるため2~3か国語としました、私立やインターナショナルスクールなど)

また、上記の質問が全て当てはまり、子どもが読み書きをしている言語が5言語である場合だと

かなり過酷な状況になりますので、子どもたちの状況をよく見ながら進めて行く方が良いでしょう。

 

日本語が出来る出来ないで、判断すると、判断を誤ります。

置かれている状況を的確に分析し、目の前のお子さんに合わせて進めていっていただければと思います。

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ルクセンブルク大公国5か国語環境で、5人の子育てをしながら、ゆっくり・じっくり・マイペース日本語継承語教育と考える力を伸ばす『どんぐり倶楽部』の算数教育方法を広めています。

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