先日、
『幼児の文字教育』 しおみとしゆき 大月書店
という本を読み返していたのですが、
その中に子ども(幼児)のお絵描き(描画)が文字学習の動機を育むために良いという
内容が書かれているのでここに紹介したいと思います。
描画(お絵描き)と書きことば
幼児のお絵描きには二つの意図があります。
- まさに絵で、出来事の印象や感動を表現する
- 自分が体験したことをストーリーとして絵で表現する
そして、1の方は、その後芸術としての『絵画』に発展していき、
2の方は、書きことば(文字)による作文という方向へ発展していく内容です。
幼児の描画活動は、一方で絵としてより完成されていきますが、他方でその内容が複雑になっていくと、
文字(ことば)がなければそれ以上は表現出来ないという方向に発展していきます。
動機のレベルで考えますと、経験したことや伝えたい内容を何とか絵によって表現しようとしていると思われ、文字による伝達(表現)を必要としている一歩手前に来ているようです。
したがって、文字による表現(伝達)意欲を育てようとするひとつの大切な方法は幼児に自由な描画活動を一杯させるということになります。園でも家庭でも、紙やクレヨン、絵の具などをいつでも使える状態でおいておき、ことあるごとに描画活動を励まし、自由に描かせていくことが大切なことです。
但し、
ある程度、描画活動が自由に出来るようになったからといって、それを文字でも表現させてみるということを急ぐのはやはり問題でしょう。絵は、文字ならくどくど説明しなければならないことを、一目みれば分かる形で描けるという利点を持っているわけですから、幼児にとりくみやすく、それを早く文字に切り替えてしまうと、結局表現したいこと(伝えたいこと)を表現できなくさせてしまいかねません。文字に切り替えるのではなく、描画は描画として書かせ続け、そのなかで伝達意欲や動機を高めることがねらいなのです。
また、いうまでもないことですが、幼児が描画を熱心に行うためには、描きたい内容を生みだす幼児らしい、楽しい感動のある生活を送らせることが先決です。生活が充実していないところに発展性のある絵は生まれません。その意味で絵がいっぱい描けるということは幼児の生活が充実しているかどうかを決める大事なメルクマール(指標)になるといえるでしょう。文字による伝達意欲も同じように生活の充実から生まれる訳ですから、描画活動を活発に行わせることは、根本のところで文字による伝達を豊かに行わせることにつながっているわけです。
以上よ要約と抜粋。
幼児のお絵描きも文字学習も、まずは子供達のやりたいという意欲をどうやって引き出すか、そこを考える必要があるようです。たんに、読める、書けるということを目的にしてしまうと、読めて書けても使い道がありません。伝えたい、知りたい、表現したい、そのような子供達の思いがあってこそ、例えば、文字という道具が子供達の成長をより良く促してくれるのだと思います。
子ども(幼児)のお絵描き(描画)を楽しく日常に取り入れて、文字学習などその後の学習のための
意欲や動機を育くんでください。
注
上記、文字(ことば)がなければそれ以上は表現出来ないという部分に関しての補足。
※感情・感覚をともなった体験の映像(視覚イメージ)の方がより複雑で正確な情報を持っているが、自分が持っているその複雑で大量の情報をそのまま伝達しようとすると、それを絵にする技術の稚拙さとまた、絵にはしにくい内面の世界を含んでいるため困難になる。伝達するには、文字による説明が必要になって来るということでしょう。視覚イメージよりも文字の方がより多くの情報を伝えることが出来るという意味ではない。